本屋の棚でかわいらしい絵本のタイトルを見て、思わず手が止まりました。

『もうじきたべられるぼく』
ページをめくった瞬間、そのストーリに胸を鷲掴みにされました。そこに描かれていたのは、一頭の子牛が静かに立っている姿。そして、たった二行の言葉。
「ぼくは牛だから、もうじき食べられるのだそうだ。
最後に一目だけ、お母さんに会いに行くことにした。」
短いセリフなのに、言葉一つひとつが棘のように心に刺さってしまう。子牛は自分の運命を受け入れながらも、最後にひと目だけお母さんに会いたいと願うその切実さに、本屋の片隅で涙がこぼれそうになりました。
この本は、単に「食べ物を大切にしよう」というだけの話ではなく、私たちが普段見ないようにしている「動物と自分との関係」が、静かに、でも強烈に描かれていたのです。
『もうじきたべられるぼく』感想
動物の日常にある「見えない痛み」
物語の後半、子牛は自分の一生を振り返りました。狭い場所で飼われ、太らされ、より高く売られるための「商品」として管理された日々。
「一度でいいから馬のように草原を走ってみたかった。動物園のゾウやキリンみたいに愛されたかった。」
この言葉に、胸がぎゅっと締め付けられました。 動物は言葉を話せません。でも、もし彼らが「本当の気持ち」を語れたなら? 狭い檻の中で、死に向かう日々をどんな思いで過ごしていたのか。
私たちがスーパーで手に取るパック詰めのお肉の向こう側には、確かに「生きていた時間」と「叶わなかった願い」が、動物たちにもあったはずです。
なぜ犬は「家族」で、牛は「食べ物」?
子牛がお母さんに会いに行くシーンで、彼は自分の運命を悟られないよう、会わずにそっと立ち去ろうとします。しかし、お母さんは我が子の気配に気づき、必死に追いかけ、見送りました。
もう二度と会えない親子の姿に、私はふと考えさせられました。
なぜ、犬や猫は「家族」として愛されるのに、豚、牛や鶏は「食べ物」として扱われるのでしょうか?
農業が繁栄する四字熟語で「六畜興旺(りくちくこうおう)」という言葉があります。 馬、牛、羊、豚、鶏、犬、これら6種の動物は、かつて農業社会において人間の生活を支える大切な「パートナー」でした。
- 牛と馬: 農耕や運搬を助ける力持ち
- 羊: 寒さをしのぐための毛を提供してくれる
- 豚: 残飯を食べ、無駄をなくしてくれる掃除屋さん
- 鶏: 卵を産み、朝を告げてくれる時計役
- 犬: 家や財産を守る番人
かつては全ての動物にそれぞれの役割があり、共存していた世の中ですが、現代では犬だけが「安全な家族」の地位に上り詰め、他の動物たちは効率化されたシステムの中で、ただ消費されるだけの存在になってしまったように感じて、むなしく思いました。
肉を減らすだけで、救われる命がある
もし私たちが「週に一回肉を食べない選択」をすればどうなるでしょうか? 需要が減れば、悲しい別れを経験する子牛が、その分だけ殺されずに済むのかもしれません。
本当の意味で「いのちを大切にする」とは、自分の体を守るだけでなく、「必要のない命の犠牲を減らすこと」でもあるはずです。
以前、ドイツで滞在した際に驚いたことがあります。なんとドイツ人の約41%が「フレキシタリアン(ゆるい菜食主義者)」で、街にはベジタリアンフレンドリーなレストランが並び、スーパーには植物性食品が豊富に揃えられていました。ドイツでは「お肉を控えること」は我慢ではなく、ごく日常的な選択肢になっていたと感じました。
彼らがそうする理由はとてもシンプルで、合理的です。
- 地球環境のため: 畜産業による環境負荷を減らす
- 動物のため: アニマルウェルフェア(動物福祉)への配慮
- 健康のため: 生活習慣病の予防
「完全にやめる」のは難しくても、「減らす」ことなら今日から誰にでもできるはずです。
❤️肉を食べない5つの理由(有害物質・寄生虫・慢性疾患・環境問題・世界の菜食ブーム)も別記事でまとめているので、興味のある方はぜひご参考ください。
世界を少しだけ優しくする選択
「せめて、僕を食べた人が自分の命を大切にしてくれたらいいな。」
これは子牛の最後の言葉でありながら、「大切にするべき命は、人間だけではない」と、私は違う解釈をしてみました。
我々は、食べることをもっと考えるべきではないのか?
食卓の料理にどんな意味があるのか?
肉ができる経緯や背景に思いを馳せ、「かわいそう」と思う気持ちを、ほんの少しの行動に変えてみること。
- お肉を食べる回数を減らしてみる。
- 大豆ミートを試してみる。
- 野菜中心のレシピを楽しんでみる。
私たちの一つひとつの選択が、動物たちの涙を減らし、より優しい世界へとつながっていくはずです。
『もうじきたべられるぼく』。この絵本がくれた「胸の痛み」を、私はこれからも忘れないでいたいと思います。
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